マルコフ連鎖モンテカルロ法

すべての状態に関する重み付き平均を確率的なサンプリングに置き換えることで、熱平衡状態における物理量の平均値を効率よく計算する手法。単に「モンテカルロ法」とも呼ばれることも多い。磁性体の理論模型であるイジング模型を例にとると、取りうる状態、すなわちスピン配位の総数は、スピン数に対して指数関数的に増加する。そのため、ごく小さな系を除き物理量の期待値を厳密に計算することは不可能である。マルコフ連鎖モンテカルロ法では、つりあい条件とエルゴード性の二つの条件を満たす確率過程を考え、状態をそのボルツマン重みにしたがって確率的に生成することで、物理量の熱平均を確率過程の時間平均で置き換える。代表的な例としては、メトロポリス法や熱浴法などが挙げられる。相転移点近傍やフラストレーションが強い系においては、しばしば平衡状態への緩和が問題となるが、拡張アンサンブル法や非局所更新法など緩和を速めるための様々な工夫もなされている。

モンテカルロ法

擬似乱数を用いてサンプリングを行うシミュレーション手法の総称。状態空間を均等な密度でサンプルするランダムサンプリング法をはじめ、重みを考慮に入れた重点的サンプリング、マルコフ連鎖モンテカルロ法など様々な手法が考案されている。モンテカルロ法は、サンプリングだけではなく、シミュレーテッドアニーリングによる最適化問題の解法などにも利用されている。

密度汎関数法

密度汎関数理論に基づいて系のエネルギーや種々の物性を計算する手法全般。密度汎関数理論は、系によらない電子密度の一意な汎関数から系のエネルギーや物性を計算できることを示したHohenberg-Kohnの定理によって理論的基盤を得た。この定理は、N電子系を記述するのに、3N個の変数を有する波動関数に対するシュレディンガー方程式を解く必要はなく、3個の変数を有する電子密度を取り扱えば十分であることを示している。従って、多電子系を記述するための非常に強力な理論であるが、汎関数の形そのものに対する処方箋を与えるものではない。汎関数の良い近似形については現在も盛んに研究が行われている。

密度行列繰り込み群(DMRG)

密度行列繰り込み群法は,離散空間量子多体系の与えられたハミルトニアンに対して,その基底状態における諸物理量の期待値を求めるための手法である.変分関数として行列積状態を用いた変分法とみなすこともできる.したがって,一般に行列積状態がよい近似を与えるような場合,例えば1次元的な量子多体問題などで効果的である.この方法は行列積状態の構成要素である行列の次元を大きくすることで原理的にはいくらでも近似の精度を上げることが可能であり,行列次元の関数として計算結果がどのように変化するかが計算の信頼度を図る一つの指標になる.また,行列積状態はテンソルネットワーク状態の特殊な場合であるので,DMRGはテンソルネットワーク法の特別な場合とみなすこともできる.