ニューラルネットワーク

動物の脳の神経構造を模した機械学習手法の一つ。ニューラルネットワークは多数のノード(ニューロン)が結合された構造を持つ。ニューラルネットワークには様々な種類があるが、代表的なものとしては、教師付き学習に用いられる順伝播(フィードフォワード)型ニューラルネットワーク(パーセプトロンとも呼ばれる)と、教師なし学習に用いられる制限付きボルツマンマシン(RBM)があげられる。近年、多数の層からなる構造を導入する(多層ニューラルネット)ことで学習能力を飛躍的に高めることが可能となった。画像認識、音声認識、言語解析、モデル生成、クラス分類など、さまざまな分野で広く使われている。物質科学分野においても、機械学習力場、変分波動関数、新規物質探索(マテリアルズ・インフォマティクス)などへの応用が進んでいる。

熱的純粋量子状態

統計力学の教科書には、有限温度の物理量(例えば、内部エネルギーや比熱など)は、ボルツマン重みに従って物理量の平均をとる、いわゆるアンサンブル平均を行うことで求めることができると書いてあります。このアンサンブル平均を実行するために、考えている系に対して、全固有値・全固有ベクトルを求める必要があるために、計算コストは基底状態計算に比べて大きく、実用的な計算を行うのはほとんど不可能でした。

ところが、近年の量子統計力学の研究の進展によって、有限温度の物理量が、原理的にはたった一つの波動関数の期待値として計算できることが示されました。アンサンブル平均が、一つの代表的な波動関数に置き換えられることが可能ではないかというアイディアの歴史は古く、1986年に今田-高橋によってすでに指摘されており、いくつかの論文[J.Jaklic and P.Prelovsek PRB 1994A. Hams and H. de Raedt PRE 2000, S.Lloyd 1988]で独立に再発見またはその証明がなされています。

杉浦-清水は2012年の論文で、有限温度の物理量が一つの波動関数で置き換えられることの証明を行い、その熱的純粋量子状態の簡便な構成方法を示しました。そして、その波動関数を熱的純粋量子状態(thermal pure quantum state)と名付けました。この手法はHΦに実装されており、完全対角化を行うことなく、広汎な量子格子模型の有限温度計算が行えるように整備してあります。HΦを用いた、熱的純粋量子状態の最近の計算例としてはフラストレートしたハバード模型の有限温度物理量の解析を行った論文があります。