マルコフ連鎖モンテカルロ法

すべての状態に関する重み付き平均を確率的なサンプリングに置き換えることで、熱平衡状態における物理量の平均値を効率よく計算する手法。単に「モンテカルロ法」とも呼ばれることも多い。磁性体の理論模型であるイジング模型を例にとると、取りうる状態、すなわちスピン配位の総数は、スピン数に対して指数関数的に増加する。そのため、ごく小さな系を除き物理量の期待値を厳密に計算することは不可能である。マルコフ連鎖モンテカルロ法では、つりあい条件とエルゴード性の二つの条件を満たす確率過程を考え、状態をそのボルツマン重みにしたがって確率的に生成することで、物理量の熱平均を確率過程の時間平均で置き換える。代表的な例としては、メトロポリス法や熱浴法などが挙げられる。相転移点近傍やフラストレーションが強い系においては、しばしば平衡状態への緩和が問題となるが、拡張アンサンブル法や非局所更新法など緩和を速めるための様々な工夫もなされている。