経路積分モンテカルロ法
虚時間経路積分表示にもとづき、d次元の量子多体系をd+1次元の古典系として表現した上でマルコフ連鎖モンテカルロ計算を実行するシミュレーション手法。世界線モンテカルロ法とも呼ばれる。古典系では粒子の位置やスピン配位からそのボルツマン重みが簡単に計算できるが、量子系では演算子の非可換性のため厳密な計算には指数関数的に大きなコストが生じる。そこで、経路積分モンテカルロ法では、鈴木-Trotter分解や高温展開などを用いて虚時間軸を導入し、一次元だけ次元の高い古典系として表現する。経路積分モンテカルロ法は、横磁場イジング模型、量子ハイゼンベルグ模型、ハバード模型などの強相関量子格子模型や、He4ボーズ粒子系など、様々な系に対して用いられている。経路積分モンテカルロ法は原理的にはどのような量子系に対しても適用可能である。しかし、競合する相互作用を持つハイゼンベルグ模型やフェルミオン系では、古典系として表現したときの重みに負のものが現れ、大きな系や低温において平均値が収束しなくなる事態が生じる。この問題は負符号問題と呼ばれ、量子モンテカルロ法を量子多体系に適用する上で最も大きな障害となっている。