第一原理計算で求められる物理量ってなんですか?

第一原理計算では、電子状態に関する情報 (電子密度・ バンド分散・状態密度・フェルミ面) が得られます。電子密 度やフェルミ面などの可視化には、専用の可視化アプリを使うと便利です (MateriApps では検索画面で「可視化・モデリング」のチェックをつけるとアプリ一覧がでてきます)。また、各種エネルギー (全エネルギー・凝集エネル ギー・吸着エネルギー・化学反応におけるエネルギー障壁など)、結晶格子に関わる物理量 (格子定数・体積弾性率)、 誘電分極や磁化、応力テンソル、仕事関数などの基本的な物理量は、ほとんどのアプリで簡単に計算結果を得ること ができます。一方、考察したい物理量によっては、第一原理計算アプリで出力されたデータを元にして、他のアプリで後処理を行う必要があります。

例えば,X 線吸収端近傍構造 (X-ray absorption near edge structure,XANES) を利用したX 線吸収分光法 (X- ray absorption spectroscopy, XAS) は、物質解析におけ る強力な手法ですが、この分光の理論解析を第一原理計算で行うには、内殻電子の情報を引き出す必要があります(内殻電子に関するX線吸収スペクトルの計算には,全電子計算法もしくは擬ポテンシャル法のうち内殻電子の情報を保持している原子局在基底やPAW+平面波基底の計算アプリが必要です)。 補助アプリにより XANES のデータ解析が可能であるほか、内殻 X 線分光に特化したアプリ (FEFFなど) もあります。MateriApps では「計算手法・アルゴリズムで絞り込む」→「X 線分光解析」を選択することで、X 線分光に関わるアプリを検索できます。

電子状態計算によって得られた結果を解釈したりモデル 計算と関連づけたりするために、バンド計算の結果から最局在ワニエ関数を構成することも多いです。最局在ワニエ関数を得ることにより、着目しているバンド構造が、どのような原子軌道 (もしくはより一般に近くの原子との “分子軌道”) から成り立っているかがわかり、物理的に見通しのよい有効強束縛模型が得られます。そのほか、共有結合性を調べるCOHP(Crystal Orbital Hamilton Population) 解析や、フォノン分散や原子有効電荷、輸送特性係数 (電気抵抗率やゼーベック係数) などの計算を行う補助アプリが あります。MateriApps の検索画面で「データ解析・補助ツール」を選択するとこれらのアプリが表示されます。