MODYLASを用いた接着界面の全原子系大規模分子動力学計算
産業界において、粘着剤を利用した材料の貼り合せ技術はなくてはならない技術の一つである。貼り合せの際に生じる接着メカニズムの理解には、界面における分子の振る舞いに関する知見取得が課題となっている。このような課題に対応したシミュレーション法として、現実系に近い大規模分子動力学法が挙げられる。しかしながら、一般的な研究室設備の計算機では、高分子量な物質である粘着剤において、全原子を用いた大規模シミュレーションを行うことは、計算負荷が過大になるため困難である。そこで本研究では、接着界面に関する大規模スケールの分子動力学計算技術構築を目的として、分子動力学法のアプリケーションである MODYLAS[1]とスーパーコンピュータ「京」を利用した研究を行った。MODYLASは、分子間に働く長距離静電相互作用の計算に高速多重極子展開法(FMM)を採用しており、大規模かつ高並列計算に適した分子動力学法アプリケーションである。図1に示すようにライフサイエンス系1000 万原子モデルの「京」による分子動力学計算において、8192ノード使用時の対64ノード加速率は92.6%と高い値を保っている[1]。本研究では、MODYLAS を図2に示すような接着界面モデル系へ適用できるようにプログラムの編集を行い、「京」の数1000ノードを利用した計算技術を構築した。その結果、数100 万原子レ ベルの接着界面における分子の振る舞いに関するシミュレーションが可能になった。今後、本技術を種々物質間の接着界面に適用することによって、接着メカニズムの理解が進むことを期待している。
[1] Y. Andoh, et al., Journal of Chemical Theory and Computation, 9 (7) 3201 (2013).
図1: 「京」によるMODYLASのベンチマーク試験
図2: 接着界面モデルの一例