開発者の声
安藤 嘉倫(名古屋大学 工学研究科 研究員)
開発者の名前
安藤 嘉倫(名古屋大学 工学研究科 研究員)
アプリの歴史
MODYLASは過去研究室において使われていた分子動力学計算コードをベースにしています。NAREGIプロジェクトにおいて初めて本格的な並列化を行い、つづく次世代スパコン(現在の京)プロジェクトにおいて数万ノード規模の並列化にも耐えうるよう、改良を加えてきました。特に、高並列時に通信量がネックとなるParticle Mesh Ewald(PME)法に代わる、高速多重極展開法(FMM)によるクーロン力計算プログラムの実装を新たに行いました。
アプリの魅力
MODYLASを使うと、一昔前のスパコンでは数100年もかかり実現できないといわれてきた厳密なクーロン力計算を取り入れた1000万個の原子からなる系での分子動力学計算が可能になります。科学として大いに興味をもたれるテーマの一つである, ウイルスに代表される生体高分子集合体の構造安定性の起源を分子動力学計算により解明することが可能になります。また、高効率なMD計算ソフトウェアはタンパク質の構造予測、細胞膜の構造変化といったナノスケールでの研究に幅広く役立つことが期待されます。
アプリの可能性・応用可能性
上述のナノスケール研究への幅広い展開に加え, MODYLASの創薬分野への応用が注目されています。ウイルスの細胞への感染やウイルスと免疫機構との応答の分子メカニズムを実験のみによって明らかにすることは困難です。全原子MDシミュレーションはこれら分子メカニズムを探る新しい手法として大いに期待されています。
例えば、ウイルスと細胞膜表面に存在する受容体との親和性を自由エネルギーとして定量化することで、ウイルスが人間の体内で特定の受容体とのみ結合する理由が分子レベルから明らかになります。そこで、ウイルスがその受容体に結合する前に、ウイルス側の接合部に受容体に似た構造の違う分子を結合させることができれば、ウイルスが細胞内に侵入するのを阻害できます。ウイルスと受容体との親和性についての分子レベルからの理解は、こうしたウイルス感染をブロックする新しい原理の薬の開発に直結しています。
開発者の夢
今後もアルゴリズムレベルからの新しい計算方法開発・実装を行うとともに、計算機科学分野の専門知識をもった研究者との交流を深め、世界的に認知されるようなソフトウェアを目指しています。