LOBSTERのテスト計算 体験記
Last Update:2024/09/02
はじめに
ここではLOBSTERのテスト計算を行ったレビューを書きます。
インストール・コンパイル方法
LOBSTERは公式サイトよりダウンロードできます。
ソースコードは配布されておらず、windows, mac, LinuxそれぞれのOS対応の実行バイナリファイルが配布されているため、インストールやコンパイルは不要です。氏名・所属・メールアドレスを記入してライセンスに同意することでダウンロードできるようになります。LOBSTER 5.0.0のダウンロードファイルは全部で約900MBほどありますが、実行バイナリは11MB程度です。実行バイナリの他に、マニュアルやテスト計算用のexampleファイルが含まれています。
また、計算結果の可視化にはwxDragonという解析・可視化ツールを使用します。
今回はLinuxでテスト計算を行います。
(windows版のwxDragonはレイアウトが崩れて使いにくかったので、今回はLinux環境(Windows11+WSL2)を利用してレビューしていきます。)
まずは、ダウンロードファイルを解凍します。
$ tar zxvf lobster-5.0.0.tar.gz
wxDragonも同様に解凍します。
$ tar zxvf wxDragon_Linux.zip
どちらのアプリもバイナリのみが提供されており、コンパイル不要です。
解凍したディレクトリには、実行バイナリの他に、マニュアルとサンプルインプット(ABINIT, VASP, QE, Generic)が用意されています。GenericはDFTコードではなく、平面波基底のDFT計算の構造や波動関数データなどを共通のjsonファイルにまとめたインプットサンプルとなっています。
今回のテスト計算では、DFT計算は行わず、GenericディレクトリにあるLi4I4(Cubic)のデータを使って、DOSやCOHPの計算を行い、データの可視化を行います。
インプット・アウトプットファイル
- standard input: lobsterin
- standard output: lobsterout
- インプットファイル(DFT計算から得られる波動関数データ)
- Generic
- LobsterInput.json
- LOBSTER_Kpoints
- Generic
- アウトプットファイル
- CHARGE.lobster
- COBICAR.lobster
- COHPCAR.lobster
- COOPCAR.lobster
- DOSCAR.lobster
- GROSSPOP.lobster
- ICOBILIST.lobster
- ICOHPLIST.lobster
- ICOOPLIST.lobster
- MadelungEnergies.lobster
- POLARIZATION.lobster
- POSCAR.lobster
- SitePotentials.lobster
- bandOverlaps.lobster
実行方法・実行結果
DFT計算を行ってwave functionの情報が出力されているディレクトリ内で、lobsterinを作成し、以下を実行します。
$ ${PATH_LOBSTER}/lobster
標準出力はlobsteroutに記録されています。
今回行うGenericディレクトリに入っているサンプルはLi4I4(Cubic)構造になります。POSCAR.lobsterに構造ファイルが出力されています。名前をPOSCARに変更し、VASPの構造ファイル可視化のviewerなどで、可視化できます。(以下の図はPOSCARをcifに変換し、OpenMX Viewerを用いて描画しています。)
結果の可視化
ここでは、結果の可視化の例として、DOSとCOHPの結果をwxDragonを用いて可視化します。
まずはDOSとPDOSの描画を行うため、以下のコマンドでwxDragonを起動します。読み込みに少し時間がかかるので辛抱強く待ちます。
$ wxDragon DOSCAR.lobster
ここのSetting panelでx,yの範囲も指定できます。
上記の手順でDOSとPDOSの図が描画できる。”Export as …”ボタンでepsやjpeg形式での保存にも対応しています。
出力された図は以下のようになりました。
同様にして、Li-I間のCOHPとCOOPを描画することができます。
$ wxDragon COHPCAR.lobster
$ wxDragon COOPCAR.lobster
DOSの図より-3eVから1eVの間にバンドギャップがあることが分かります。-pCOHPが-7eVから-3eVあたりで正(結合的)、1eVを超えたところで負(反結合的)となっていることから、Li-Iの結合によりバンドギャップが開いている様子が分かります。
まとめ
本レビュー記事では、平面波基底のDFT計算結果からLOBSTER+wxDragonを用いることでDOS・PDOSとCOHP・COOPの計算と描画テストを行いました。描画ソフトのwxDragonは一見便利ですが、PC環境によってはうまく描画されなかったり、途中で落ちてしますことがありました。matplotlibやgnuplotなどの利用に慣れているユーザがであれば、そちらを使うことも検討したほうが良いと思います。
LOBSTERは平面波基底のDFTにのみ対応していますが、局在基底を利用するOpenMX(ver. 4.0)やSiestaなどのようにDFTコード内でCOHP・COOPの計算に対応したアプリがあります。