開発者の声
アプリの歴史
分割統治法では
- 計算時間がNに比例。
- 多数の計算ノードからなるスーパーコンピュータを用いた効率的な並列計算が可能。
- 部分系を小さくしても、精度があまり落ちない。
といった利点があります。一方で、相関エネルギーの取り扱いに関する困難がありました。ある時、研究室のゼミで「エネルギー密度解析(EDA)」の発表を聞き、分割統治法にEDAを採り入れるというアイデアがひらめきました。そのアイデアが突破口となり、相関エネルギーに対する困難を解決することに成功し、本アプリの開発に結びつけることができました。
アプリの魅力
エネルギー密度解析と分割統治法を組み合わせることによって、電子相関を含んだ精度の高い計算が、短い時間でできるようになりました。この手法は、電子が局在しておらず、あちこち動きまわっているような物質を調べるのに適しています。「京」コンピュータを使えば、ナノサイズの物質の超高精度計算にも手が届きますので、様々な応用技術への発展が期待されます。例えば、有機太陽電池の発電効率には、その中で電荷を運ぶペンタセンなどの電気的な性質が大きく影響します。分割統治法を用いて電荷の動きやすさを計算することで、より高い効率をもつ太陽電池材料のデザインも可能となりつつあります。
アプリの将来性・応用可能性
エネルギー密度解析によって領域ごとの相関エネルギーが計算できるので、ここの相互作用が大きいとか、ここは結合が切れそうで不安定だとかいったことを直接解析することができます。例えば、HIV(エイズウイルス) とその活動を抑える逆転写酵素阻害剤がどのように結合しているのかを詳しく調べることが可能です。将来的には、このような情報を用いて、より強力にはたらく薬の開発を安全に進め、コストの大幅な削減に加え、副作用の予見につなげることができればと考えています。