OCTA/COGNAC と OCTA/SUSHIを用いたポリマーブレンド界面の剥離挙動シミュレーション -ズーミングを利用したポリマーブレンド界面の剥離挙動シミュレーション-
ポリマーブレンドの界面強度は、界面の接着性はもとより、バルク材料の破壊強度等にも影響を及ぼすことが知られており、界面の構造および剥離挙動を明らかにすることは、高分子材料設計を行なう上で重要な課題です。
我々はこの課題に対して汎用粗視化分子動力学プログラムOCTA/COGNACを用いて検討を行いました。このようなポリマーブレンド界面の剥離挙動を検討する上で以下のような点が必要となります。
(1) 十分に平衡化された妥当な界面構造がモデリングできる事
(2) 現実的な剥離の時間スケールでの挙動を観察できること
(3) 材料開発にフィードバックするためにPCクラスタレベルのマシンでケーススタディーが可能であること
高分子の長い緩和時間を考えると、全原子分子動力学で上記の要求を満たすことは困難で、粗視化モデルによるシミュレーションが現実的な選択になります。さらにOCTA/COGNACでは平均場プログラムSUSHIとの連携(ズーミング)機能を持ち、多相構造を有する系の平衡構造を効率的に作成することが出来ます。
図には、相容化剤としてジブロックコポリマーを添加した系の界面構造と剥離時のスナップショットを示します。図に示されるようにポリマーブレンド両相のモノマー構造をブロック化したジブロックコポリマーは界面に凝集し、両相と相互作用することにより界面を強化し、剥離エネルギーを向上させるという現象が確認されました。
このような粗視化分子動力学シミュレーションにより、相溶化剤の分子構造、添加量の最適化のためのスクリーニングが可能になりました。
図 ジブロックコポリマーにより強化されたポリマーブレンド界面の剥離挙動
マゼンタ/シアンはホモポリマー、赤-青はジブロックコポリマーを示す。
参考文献:Takeshi Aoyagi, “Coarse-grained molecular dynamics study of the interface of polymer blends”, Nihon Reoroji Gakkaishi, 37(2), 69 (2009).